地震予知に挑むブログ

不可能と結論づけられた地震予知。でも、迫りくる大地震の尻尾を捉えたい。

大地震や災害時に生死を分ける「正常化バイアス」って、知ってる?

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「正常化バイアス」という言葉を知っていますか?
地震や大きな災害の発生時に、命を守る為に、大切なキーワードとして、注目されている言葉です。
実は、大地震の後で、この正常化バイアスで命を落とす人が、とても多いのです。
東日本大震災でも、最近の熊本地震でも、恐らくこの正常化バイアスの罠にはまって、命を落とした方が沢山いらっしゃいました。

 

つまり、大地震の備えに、絶対に知っておいて欲しい言葉です。
しかし、一般の方には、あまり浸透していません。
これを知ると知らないとでは、生存確率は大違いと言っても過言ではありません。
特に、大地震の発生時に、避難誘導する立場にある方は、知っておくことは必須です。
ここでは、その大切な「正常化バイアス」について解説します。是非知って、災害時の行動に役立てて下さい。

 

正常化バイアスのバイアスとは、「思い込み」という意味です。
正常化、つまり、正常で異常では無い、と思い込む事。これが正常化バイアスです。


地震や災害の発生時は、明らかに異常事態ですよね。
でも、人間の脳は、その異常事態をすんなりと受け入れられないのです。
そして、無意識にこう思ってしまいます。
「今まで、大丈夫だった。だから、多分、今回も大丈夫」
本当は、急いで避難しなくてはならない状況でも、正しい判断が出来ないのです。そして、結果的に避難行動が遅れ、命を落とすような重大な事態になる事もあります。
これが、正常化バイアスの罠です。

 

正常化バイアスという言葉が有名になったのは、韓国で起こった地下鉄火災でした。
地下鉄の車内で火災が起こるという、生死の危機が迫る恐ろしい状況では、今すぐパニックになって逃げるのが普通と思うでしょう。
しかし、車内で撮られた写真には、座って雑誌を読み続ける乗客の姿が写っていました。
考えられないかも知れませんが、事実です。
人間は、いざ危険が身近に迫っても、現実のものとして受け入れられないのです。


日本では、雲仙普賢岳火砕流で43名もの死者・行方不明者を出した悲劇も、正常化バイアスによるところが大きいとされています。危険地帯には有名な火山学者や報道関係者などが多数いて、危機感が薄れていたところに、大火砕流が襲ったのです。
東日本大震災では、津波到達まで、実は1時間以上もかかっています。大津波警報を知っていても避難せず、犠牲になった方も大勢いらっしゃいました。これも、まさに正常化バイアスです。
熊本地震では、最初の震度7の後に、被害の受けた家に戻り、二度目の震度7で犠牲になった方もいらっしゃいました。

 

実は、私自身も、阪神大震災の時に、この正常化バイアスの罠にはまった一人です。
地震発生後もマンションの部屋に留まっていたのですが、近くの山裏が燃えているのが判ったのです。
「これは、なんか、まずい状況かも・・・」
そう感じた時に、何をしようとしたか。まず、お茶を飲もうとしました。
え? 何やってるの? そんな非常時に。そう、呆れるでしょう。
でも、私のその時の心理状態はこうでした。
「大丈夫、これは、たいした事じゃないわ。まず、落ち着かなきゃ。落ち着け。落ち着け」
だから、お茶を飲もうとしたのです。簡易コンロの火を着けようとした時、管理組合の方が、ドアを叩いてくれました。
「急いで逃げて下さい! ガス漏れの危険があります!」
そこで、始めてハッとして、ようやく外に避難する事が出来たのです。

 

地震や災害の発生時には、時には大急ぎで避難しなければなりません。
しかし、人間は逆に、動けなくなります。
ただでさえ災害時には、頭がフリーズしたように判断能力が落ちるので、もしもリーダー格の人が「暫く留まって、様子を見よう」と言ったら、留まってしまうでしょう。
これが危険なんです。


地震後には速やかに安全を確保する行動を起こして下さい。
「大丈夫。動くな」と言っている人がいたら、正常化バイアスに罠にはまっていると思って、あなたは自身の判断で動いて下さい。

 

正常化バイアスの罠にはまると、時には命さえ落としてしまします。あなたが避難を誘導する立場なら、被害は多くに人に及ぶかも知れません。
是非、意識して、災害時にはこの言葉を思い出して下さい。