地震予知に挑むブログ

不可能と結論づけられた地震予知。でも、迫りくる大地震の尻尾を捉えたい。

知らないと怖い地震予知の新常識①東海地震の警戒宣言の驚くべき事実

地震予知についての知識は、かなり古い考え方を信じている人が多いようです。

例えば、東海地震は、事前に警戒宣言が出る、と思っていませんか。

イメージとしては、東海地区に配置された観測機器が異常を察知して、それによって東海地震判定会が開かれ、危険と判断されると政府から警戒宣言が出る、という感じでしょう。

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そもそも、東海地震の危険性が指摘されたのは、昭和の東南海地震(1944年)と南海地震(1946年)が発生したのに、東海地震だけ発生しなかったからです。

東海・東南海・南海の地震は三つ子地震と言われ、過去はほぼ連動してきました。だから、東海地震はいつ起きてもおかしくない、と対策の必要性が叫ばれたのです。

そして、政府は巨額を投じ、東海地方の観測網を設置しました。地震予知に国を挙げて取り組んだのは快挙です。

東海地震の本震の前には、少しずつ地盤が滑る現象、スロースリップが発生するはずだ。それを察知出来れば、事前に警戒宣言が出せるはずだ。

事前にスロースリップが発生するという根拠は、関東大震災の直前に地盤調査をしていた計器が安定しなかった、という記録があったからです。

 

でも、これは、40年も前に想定されたことなのです。まだ、コンピューターも発達していない時代ですね。

 

さて、いざ観測を開始すると、実はスロースリップは頻繁に起きている事が判りました。継続的に起きたり、止まったりを繰り返しています。

東海地震の本震の前にも、確かにスロースリップは発生するでしょう。大きなプレート間の破壊の前には、ズルズルと地盤が滑り始め、ドンッと本震が発生します。

しかし、通常のスロースリップと、大地震前のスロースリップの見分けはつきませんよね。

そもそも、前兆としてのスロースリップが発生してから、本震までどれぐらい時間がかかるのでしょうか。

故溝上恵教授(元東海地震判定会会長)は、最新のスーパーコンピューターを使ってシュミレーションをしてみました。

すると、その結果は衝撃的でした。前兆から本震まで、約30分だったのです。長くても半日、早いものは数分で本震に至ったのです。

東海地震の警戒宣言が出されるまでには、沢山の段階を踏まなくてはなりません。

まず異常なデータが観測されると、計器の異常が疑われ、精査が行われます。それでも異常と判断されたら、総理大臣へ通達されます。総理は判定会のメンバーを招集します。全国からメンバーが東京に集結すると、判定会が開かれます。そこで、危険と判断されると、まず警察や公共機関、マスコミなどに連絡され、そして総理による警戒宣言が発令されるのです。

 

本震まで30分ですよ。半日あったって、間に合う訳ないですよね。

そこで、東海地震の警戒宣言について、大きく考え方が変わったのです。さすが溝上教授、対応は早かった。

警戒宣言の前に、注意情報が発表されることになったのです。

つまり、計器に異常が出ていますよと、情報がでるのです。警戒宣言はまだ出せないけど、ご自身で危険性は判断してね、ということです。

更に、研究機関でしか見れなかった地震に関するデータを、インターネットで一般人でもアクセス可能にし、情報公開を進めました。

東海地震の警戒宣言は、日本経済に悪影響をもたらすのは明白なので、よっぽどの異常データが出ない限り、まず出ないでしょう。

この注意情報も、スピーディーに公開されるのか、怪しいものです。溝上氏から代が変わり、情報公開も積極的ではないようで、地殻変動情報もリアルタイムではなくなりました。

巨額を投じた地震予知のシステムは、ほとんど機能しないのです。

ただ、無駄ではありませんでした。防災意識は高まりましたし、データが一般人でも手に入るようになりました。

地震予知に関心を持つことは、防災にも役立つのです。政府に頼らず、どうかご自身で情報収集に努めて下さい。

 

東海地震はいつ起こるのか―地球科学と噴火・地震予測

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